値下げは無関係?元データ担当が明かす「もうすぐ消える商品」の見分け方

お気に入りのドレッシング、毎朝食べていたパン、子どもが好きだったお菓子。

いつものようにスーパーへ行ったら、棚から忽然と姿を消していて、代わりに「販売終了」の文字…。

あの、なんとも言えない寂しさと残念な気持ち、あなたも経験がありませんか?

「やっぱり人気がなかったのかな」
「私の好き、は少数派だったんだ…」

なんて、少しだけ落ち込んでしまうかもしれません。

でも、実は商品の販売終了は、単純に「売れなかったから」という理由だけではないんです。

商品部で、日々たくさんの商品のデータを管理し、ヒット商品が生まれてから消えるまでを数字の面から見てきた経験から言うと、その裏側には、次へのステップだったり、作り手側の事情だったり、さまざまなドラマが隠されています

この記事を読めば、なぜお気に入りの商品がなくなってしまうのか、その仕組みが少しだけ見えてくるはずです。

そして、日々の買い物の景色が、ほんの少し違って見えるようになるかもしれません。

「売れなかったから」だけじゃない。商品が棚から消える、それぞれの物語

「売れ行きが悪かったから、なくなる」

多くの人がそう考えるかもしれませんが、実はそれだけが理由ではありません。

かつて商品マスタのデータを見ていた立場からすると、売上ランキングの上位にいた人気商品に「終売」のフラグが立つことも、決して珍しくありませんでした。

では、一体どんな理由があるのでしょうか。

① 次の主役への「バトンタッチ」

実は最も多いのが、このリニューアルに向けた計画的な販売終了です。

なぜなら、作り手側には「お客様に飽きられてはいけない」という想いが常にあるからです。

より美味しくなったり、パッケージが使いやすくなったりと、少しでも商品を良くしようと改善が繰り返されます。

特に、生活に根差した定番商品ほどそのサイクルは早く、リニューアル品が発売されたその日から、もう次のリニューアルに向けた開発が始まる、なんて商品もあるほどです。

もちろん、長年変わらない味や形が求められる商品もありますが、私の体感ではそれはほんの一握りです。

こうして後継となる新商品の発売が決まると、古い商品はその役目を終えます。

新旧の商品データが並んだ画面を見ながら、「次はどんな風に変わるんだろう」と、作り手側の一員としてひそかに楽しみに感じたこともありました。

② 原材料が手に入らない

天候不順で特定の野菜が不作になったり、海外からの輸入がストップしたり。

商品の味や品質を守るために必要な材料が安定して手に入りにくくなると、作りたくても作れない、という状況に陥ります。

特にこだわりの素材を使っている商品ほど、こうしたリスクと隣り合わせなのです。

わたし
わたし

こういうとき、世界を駆けずり回って原材料を手配してくれるのが商社さん。
腕の見せ所…!

③ 作り手側の「工場の都合」

例えば、複数の工場を持っているメーカーが、生産効率を上げるために一つの工場に生産ラインを集約する、といったケースです。

その過程で、特殊な機械が必要だったり、生産量が少なかったりする商品は、残念ながら製造中止の判断が下されることがあります。

会社全体の効率を考えた結果、一部の商品が姿を消すことになるのです。

④ 会社としての「戦略的な判断」

「このブランドは、ヘルシー路線に集中しよう」
「この価格帯の商品を増やそう」

会社全体の大きな方針転換によって、既存の商品が見直されることがあります。

一つ一つの売上は決して悪くなくても、です。

商品開発に携わった人にとって、自分が手がけた商品は我が子ように愛おしいもの。
情熱を持って仕事をしていた人ほど、会社の方針転換による終売は少し悲しいものです。

ですが、開発者が陥りがちなのが、自分の商品が可愛すぎるあまり、日々変わりゆくお客様の好みやトレンドの変化に気づけなくなってしまうこと。

そういった、お客様の本当のニーズから少しずれてしまったこだわりを一度リセットし、悪い循環を断ち切るために、こうした戦略的な判断が定期的に必要になることもあるのです。

わたし
わたし

「開発者の熱量=お客様からの人気」であれば問題ないのですが、どうしても開発側は商品愛ゆえに独りよがりになりがちなのが難しいところ

お店の棚が教えてくれる、販売終了の「静かなサイン」

販売終了は、ある日突然やってくるように感じますが、実はその少し前から、お店の棚に「静かなサイン」が出ていることがあります。

① 棚の「すみっこ」への移動

いつもは一番目立つゴールデンゾーンに置かれていたのに、なんだか棚の端っこや、下の段に追いやられている…

これは終売のわかりやすいサインです。

ただしこれは、私が担当していたお弁当やお惣菜のように、毎日のように配送されて鮮度が短い商品に限った話ではあります。

お店の発注担当者は、日々の販売データや売場の並びから「明日はこれが売れるだろう」という仮説を立て、商品の発注数を調整しています。

当然、販売数が落ちてきた商品は発注数も減っていき、それに伴って、お客様の目に入りやすい「売れ筋商品」が置かれる場所から、棚の隅へと追いやられていくのです。

そして、発注数がゼロに近づいたとき、その商品は静かに棚から姿を消します。

② ライバルと思われる新商品の告知が出る

同じメーカーから、似たようなカテゴリの新商品の発売が告知されたときも、サインのひとつです。

メーカーも無限に商品を出し続けられるわけではありません。

新しい商品を生み出すためには、既存の商品のどれかを終売にして新しいものと入れ替える、いわば商品の「新陳代謝」が必要になるのです。

テレビCMやお店のポスターなどでコンセプトが似ている新商品の登場を知ったら、今あるお気に入りの商品は、その役目を終える日が近いのかもしれません。

商品の「終わり」を知ることで、自分らしい選択が始まる

この記事では、お気に入りの商品が棚から消えてしまう裏側には、単なる売上不振だけでなく、リニューアルや原材料、企業の戦略といったさまざまな理由があること、そしてその兆候は日々の買い物の中でも見つけられることをお伝えしてきました。

「販売終了」と聞くと、どうしてもネガティブなイメージが湧いてしまいます。

でも、その背景にある仕組みを知ると、一つひとつの商品を少し違った視点で見られるようになりませんか。

「この商品は、どんな理由でここに並んでいるんだろう?」
「私が『好き』だと感じるのは、この商品のどんなところだろう?」

そんな風に、商品の裏側を少しだけ想像してみること。

それは、広告や口コミに流されず、自分にとって本当に価値あるものを見つけるための、大切な一歩だと感じます。

商品の終わりは、悲しい出来事です。

でもそれは同時に、あなたの「好き」という気持ちを再確認し、自分だけの「選択眼」を磨く良い機会なのかもしれません。

この記事が、あなたの毎日の買い物を、少しでも深く、楽しいものにする小さなきっかけになれば嬉しいです。

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