コンビニスイーツの「入れ替わりが激しい」本当の理由。元商品部が教える「インストアコード」の仕組み

「あのコンビニスイーツ、美味しかったのに最近見ないな」
「話題の新商品、気になっていたけど、もう棚にない…」

スーパーやコンビニで、せっかく見つけた「お気に入り」のスイーツが、いつの間にか消えていた経験はありませんか?

特に、コンビニのオリジナルスイーツなどは「この前見かけたばかりなのに…」と驚くほど、入れ替わりが激しいと感じませんか?

情報があふれる中で、「私の選択、間違ってたかな?」と不安になったり、逆に「どうせすぐ無くなるかも」と新商品を試すのをためらってしまったり…。

実は、クッキーやチョコレートといったお菓子と比べて、コンビニスイーツなどが「短命」になりやすいのには、明確な「仕組み」の違いがあります。

私は以前、大手企業の商品部で、まさにそのスイーツやパンといった日配(デイリー)商品のデータ管理を担当していました。

ヒット商品の裏側で、商品マスタ(※お店で商品を管理するための台帳データ)から静かに削除されていく商品を、何千と見送ってきた経験があります。

この記事では、私が実際に見てきた商品データと管理コードの観点から、なぜ日配スイーツの入れ替わりがこれほど激しいのか、その裏側を解説します。

この記事を読めば、あなたが日々目にする商品棚の「違い」が分かり、広告や新発売の言葉に惑わされず、自分にとって本当に価値あるものを選ぶ「賢い選択眼」を磨くヒントが得られるはずです。

お菓子とスイーツ、なぜ「寿命」が違うのか?商品コードが握るカギ

そもそも、商品が棚から消える(=終売になる)理由は、大きく分けて「売れなかった」場合と、「最初から販売期間が決まっていて、計画通りに終了した」場合の2つがあります。

ですが、それ以前に、商品が管理されている「バーコード」の種類によって、その商品の「生まれやすさ」と「消えやすさ」が大きく左右されている、という事実はあまり知られていません。

皆さんがよく目にする、袋入りのお菓子や飲料、調味料などのパッケージに印刷されているバーコード。

これは「JANコード」と呼ばれ、全国・全世界で共通の番号が使われています。

メーカーの工場で印字(=ソースマーキング)され、一度登録されると、比較的長い期間使われる傾向にあります。

一方で、コンビニのチルドスイーツ、お弁当、店内で調理されるお惣菜といった、お菓子やスナック菓子と比べて消費期限が短く、店舗や地域によって内容が変わりやすい商品には、別のコードが使われることが多くあります。

それがインストアコード(店舗独自のコード)です。

この「コードの違い」こそが、コンビニスイーツなどの入れ替わりが激しい、最大の理由なのです。

コンビニスイーツが「すぐ消える」本当の理由

インストアコードは、JANコードと違い、全国共通である必要がありません。
いわば「そのお店や地域限定で使われる背番号」のようなものです。

このコードで管理される商品は、店舗(や近隣の専用工場)で製造・パック詰めされることが多いため、企画から販売までの「フットワーク」が非常に軽い、という特徴があります。

私のいた部門には、日々、膨大な数の「インストアコード商品」の登録依頼が来ていました。

例えば、『今週の新商品A(スイーツ)』の売れ行きが想定より悪ければ、来週にはそのデータが取消(終売処理)され、すぐさま『新商品B(スイーツ)』のマスタ登録依頼が送られてくる、といった具合です。

JANコードで管理されるお菓子(クッキーなど)が入れ替わる時、その主導権は基本的にメーカー側にあります。

メーカーが新商品を企画し、工場の生産ライン調整や全国の在庫管理といった大掛かりな準備を整えた上で、小売店に「この商品を終売し、こちらの新商品に切り替えませんか」という提案がなされます。

小売店側で判断できるのは、その提案を受けるか、あるいは(ベンダーと相談の上で)入れ替えずに棚から外す(終売する)か、という選択が中心です。

一方、インストアコードの商品(コンビニスイーツなど)は、その企画の主導権が小売店側にあることが大きな違いです。

もちろん、データ登録だけで棚が変わるわけではなく、専用工場での生産ラインの調整は欠かせません。

しかし、その調整が「全国の工場」ではなく、「地域や店舗向けの専用工場」という(JANコード商品に比べれば)小規模な範囲で完結します。

また、お菓子などと比べて消費期限が短いため、終売の際に全国的な在庫調整に振り回されるリスクもほとんどありません

つまり、JANコード商品(=メーカー主導)に比べて、インストアコード商品(=小売主導)は、企画から製造、販売、終売までのサイクルを格段に速く回すことができる「仕組み」になっています。

このフットワークの軽さゆえに、こまめなブラッシュアップがしやすく、お客様の声や売れ行きに応じて「より求めるものに早く近付けられる」という側面もあるのです。

データ管理の視点から見ると、コンビニスイーツやお弁当といったカテゴリは、そもそも「定番化」するものがごくわずかで、ほとんどが短期間で入れ替わることを前提とした「仕組み」で動いている、というのが正直な実感でした。

「コードの違い」が分かれば、買い物の「視点」が変わる

今回は、コンビニスイーツなどの入れ替わりが激しい理由について、元商品部員の視点からお話ししました。

それは、袋菓子などとは異なる「インストアコード」という仕組みで管理されており、それゆえに「フットワーク軽く、生まれやすく、消えやすい」という宿命を背負っているからです。

「消えた=悪い商品」だったわけでも、「定番=絶対に安心」というわけでもありません。

大切なのは、その裏側にある「仕組み」を少しだけ意識してみることです。

同じ「新商品」でも、JANコード(袋菓子など)であれば「じっくり試せるかな」、インストアコード(チルドスイーツなど)であれば「これは今しか出会えないかもしれない」と、一歩引いた視点で商品を見定められるようになります。

情報に振り回されず、仕組みを理解した上で「今、これを試してみたい」と判断できること。
それこそが、忙しい日々の中で「失敗しない」賢い選択につながっていきます。

棚の裏側にある「コードの違い」を知ることは、日々の買い物で自分だけの「正解」を見つける、一番の近道なのかもしれません。

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