消える商品と残る商品の違いとは? データ管理の現場で見た、ヒット商品が生まれる「裏側」の仕組み

スーパーやコンビニに行くと、毎週のように並ぶ華やかな「新商品」。

パッケージも魅力的で、ついつい目移りしてしまいますよね。

でも、いざ買ってみて「あれ、思ったほどじゃないかも……」と後悔した経験、ありませんか?

限られた時間と予算でお買い物をするなら、やはり「ハズレ」は引きたくないものです。

実は、本当に優秀な商品は、派手な新登場の時ではなく、ひっそりと行われる「あるタイミング」にこそ、その真価が現れます。

今回は、かつて企業の商品部でデータ管理をしていた私の視点から、売り場で本当に注目すべき商品の特徴についてお話しします。

これを知ると、なんとなく選んでいたいつもの棚が、少し違った景色に見えてくるかもしれません。

華やかな「新商品」の裏で、ひっそりと行われる「登録変更」の意味

私がいた商品部では、毎週膨大な数の商品データが動いていました。

商品マスタ(商品の戸籍のようなデータ)の管理画面を見ていると、毎週大量の「新商品」登録がある一方で、実はそれと同じくらい、既存商品の「仕様変更(リニューアル)」の登録も頻繁に行われていました。

特にお弁当やパンといった日配(デイリー)商品は、賞味期限が短く、売れ行きがダイレクトに数字に出るため、そのサイクルは非常に早かったことを覚えています。

私たちは新商品にワクワクしがちですが、データ管理の視点で見ると少し景色が違います。

新商品は、あくまで「期待」で作られた未知数の存在。

一方でリニューアル商品は、過去の販売実績というシビアな「データ」に基づいて作られた、確かな存在だからです。

MD(商品開発担当者)がわざわざコストをかけ、マスタの登録情報を書き換えてまでリニューアルを行うのは、「この商品は売れるポテンシャルがあるのに、ここが惜しい」という明確な改善点が見えている証拠。

つまり、メーカーや販売店の「どうしても売りたい」「自信作に育てたい」という熱量が込められているのは、実は新商品よりもリニューアル商品であることも多いのです。

売れ続ける商品は、何度も「進化」を繰り返している

ロングセラーと呼ばれる定番商品でも、マスタデータ上では、JANコード(バーコード)や管理番号が何度も切り替わっていることがあります。

変わっていないように見えて、実は時代や顧客の好みの変化に合わせて、何度も進化を繰り返しているのです。

私が担当していた頃、特に印象的だったのが「食パン」の事例です。

一時期、空前の「高級食パンブーム」がありましたよね。
甘くてしっとりとした、そのまま食べて美味しい食パンが街中に溢れました。

当時、私が勤めていた会社の高級ラインの食パンは、データ上の売上推移に少し元気がなくなっている頃でした。

そんな時、店舗向けに作成された「商品の変更案内」を見ていた私の目に、ある記述が飛び込んできました。

そこに記された担当MDのリニューアルポイントを読んで、私はハッとしました。

マスタデータ上ではJANコードの更新といった事務的な変更に見えましたが、単に流行りの高級食パンの真似をして甘くするのではなく、自社が長年培ってきた「生で食べても焼いても美味しい、小麦本来の奥深い味わい」という強みはそのままに、原材料の配合を見直し、製法を微調整する内容だったからです。

私はその案内を見ながら、「これは流行への迎合ではなく、自社の強みの『強化』なんだ」と感じたことを覚えています。

結果はどうだったと思いますか?

リニューアル後、その食パンの売上グラフはV字回復し、ブームが落ち着いた後も長く愛される大ヒット商品となりました。

派手な新商品ではなくても、世間の評価(流行)を冷静に分析し、自分たちの強みに取り入れた「改善」こそが、本当のヒットを生むのだとデータを通して教わりました。

完成された「一番」ではなく、成長し続ける「逸品」を選ぶ楽しみ

私たちはつい「一番売れているもの」や「最新のもの」を探したくなります。

ですが、棚に並ぶ商品の裏側には、過去のデータから学び、より良くあろうと改善を重ねた作り手の試行錯誤が詰まっています。

「新発売」のポップだけでなく、商品のパッケージに書かれた「おいしくなりました」や「リニューアル」の文字。
あるいは、以前と少しだけ原材料の並び順が変わった商品。

そういった「変化」に気づけるようになると、買い物はもっと面白くなります。

次のお買い物の際は、ぜひそんな「成長し続けている商品」を手に取ってみてください。

それはきっと、一見地味だけれど、あなたの暮らしに長く寄り添ってくれる、誠実なパートナーになってくれるはずです。

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