コンビニに立ち寄った際、「最近、このスイーツをよく見かけるな」「どこもかしこも、このフレーバーばかりだな」と感じることはありませんか?
SNSで話題だから、テレビで紹介されたから。
トレンドが生まれる理由はさまざまですが、実はその裏側には、私たち消費者の手元に届くずっと前から緻密に組まれた「仕組み」が存在します。
私はかつて、大手企業の商品部でお弁当やパン、惣菜といった日配(デイリー)商品のデータ管理や、店舗向けの商品案内作成に携わっていました。
ヒット商品が生まれ、棚に並び、操作を終えて消えていくまでの流れを、システムとデータの観点から見守ってきたのです。
この記事を読めば、コンビニのトレンドがどのように作られ、私たちの「買いたい」という気持ちがどう動かされているのか、その仕組みが分かります。
表面的な流行に振り回されず、納得して商品を選べる「賢い選択眼」を一緒に養っていきましょう。
トレンドは偶然ではない。データから逆算された「カレンダー」の存在

コンビニの棚を眺めていると、毎週のように新しい商品が登場し、季節感のあるフレーバーが並びます。
これらは決して、その場の思いつきで並んでいるわけではありません。
商品部の管理部門から見ると、トレンドは「商品マスタ」という巨大なデータベースの中で、数週間前から着実に準備されています。
新しいお弁当やパンが発売されるには、事前に「商品コード」が発行され、価格や消費期限、さらにはアレルギー情報などの詳細なデータが登録される必要があります。
特に消費期限が短く、毎日納品される日配商品は、管理が非常にシビアです。
インストアコード(店舗で生成されるバーコード)の設定や、販促キャンペーンの予約登録など、システム上では「いつ、どの商品が、いくらで、どんな売り方か」が、かなり早い段階で決定されています。
元商品部の視点から言えば、トレンドとは「予測できない突発的な現象」ではなく、データに基づいた「計画的なカレンダー」に近いものです。
私たちが「流行っているな」と感じる頃には、すでに次の、あるいはその次のトレンドの種が、データとして静かにスタンバイしているのです。
なぜ「選ばされている」と感じないのか?情報を届ける「言葉」の裏側

「トレンドだから買ってみよう」と思うとき、私たちの背中をそっと押しているのは何でしょうか。
それは、商品そのものの魅力だけでなく、その魅力を伝える「情報の設計」です。
私は商品部で、店舗に向けた「商品案内」の作成も担当していました。
開発担当者が込めた「この素材のこだわり」や「この食感の秘密」といった熱量を、現場の店員さんがお客様に伝えたくなるような、分かりやすい言葉へと翻訳する仕事です。
例えば、「今、健康志向の女性にこれが人気です」といったターゲットの絞り込みや、「この時間帯にこの配置で並べると手に取ってもらいやすい」といった販売戦略。
これらは、商品データから読み取れる客層や購買傾向を分析した結果、導き出されたものです。
私たちが何気なく手に取るその一つひとつは、開発者の想いをデータとして整理し、それを最も魅力的な形で見える化した、いわば「情報のバトン」の結果と言えます。
この仕組みを知ると、コンビニの棚がただの商品陳列ではなく、誰かが一生懸命考えた「提案の場所」に見えてくるかもしれません。
流行の裏側を知ることで、あなたの「納得感」はもっと深くなる

コンビニのトレンドが計画的に作られていると聞くと、「踊らされていたのか」と少し寂しく感じる方もいるかもしれません。
しかし、その仕組みを知ることは、決して悪いことではありません。
むしろ、裏側にある意図や努力を知ることで、「今はこれが推されているけれど、私はあえて定番のこれを選ぼう」といった、自分なりの判断基準を持つことができます。
次にコンビニへ行ったときは、ぜひ棚の配置やポップを少しだけ客観的に眺めてみてください。
「このフレーバーが並んでいるのは、季節のデータに基づいた提案なんだな」
「このお弁当が目立つ位置にあるのは、今週の注力商品だからなんだな」
そんなふうに一歩引いた視点を持つことが、情報の波に飲まれず、自分の「好き」や「必要」を大切に選べるようになる第一歩です。
あなたの毎日が、ほんの少しの「知る喜び」で、より豊かなものになりますように。


