なぜ、あのお気に入りは消えたのか。元商品部が明かす商品の「寿命」の裏側

「あれ、いつも使っていたあのシャンプー、最近見かけないな…」

お店の棚を何度も見返したり、ネットで検索したり。
やっと見つけたお気に入りの商品が、ある日突然姿を消してしまい、がっかりした経験はありませんか?

人気があったはずなのに、口コミも良かったのに、どうしてなくなってしまうんだろう。
実は、多くの商品には、私たちが知らない「寿命」が存在します。

私は以前、食品を取り扱う企業の商品部で約8年間、たくさんの商品のデータ管理や販売の仕組みづくりに携わってきました。
ヒット商品が生まれ、そして静かに消えていく流れを、その裏側からずっと見てきた経験があります。

この記事では、元商品部だからこそお伝えできる「商品がお店から消えてしまう本当の理由」を解説します。

この記事を読めば、なぜお気に入りの商品がなくなってしまうのかが分かり、情報に振り回されず、自分らしいモノ選びをするための、新しい視点が手に入ります。

人気があっても「永遠」はない?すべての商品に存在するライフサイクル

「人気商品なんだから、ずっと売ればいいのに」と思いますよね。

ですが、実はどんな大ヒット商品にも、人間と同じように一生の流れ、商品のライフサイクルというものが存在します。

これは、「導入期」→「成長期」→「成熟期」→「衰退期」という4つの段階で表されます。

  • 導入期・成長期:新発売され、メディアなどで話題になり、売上がぐんぐん伸びていく時期。
  • 成熟期:売上は安定しているものの、爆発的な伸びは落ち着いてくる時期。多くの定番商品がこの段階にあります。
  • 衰退期:新しい競合商品が出たり、トレンドが変化したりして、少しずつ売上が落ちていく時期。

また、長年愛される定番商品の中には、一見するとずっと変わらないように見えて、実は時代に合わせて少しずつ改良を繰り返しているものが少なくありません。

そういった商品は、発売されたばかりの「導入期」の段階で、すでに次の改良に向けた計画が始まっていることも多いのです。

一方で、多くの企業は、一般的な商品が「成熟期」に入ったあたりから、次の新商品の準備を始めます。
データを見ていると、売上のグラフがなだらかになった商品は、「次の交代要員」として、静かにリストアップされ始めるのです。

毎年新しい香りが出る柔軟剤や、少しだけパッケージが変わる化粧水。
あれは、商品を「衰退期」に入らせないための、いわば延命措置のようなものだったり。

しかし、そのテコ入れにも限界が来たとき、商品は静かにその役目を終えることになります。

あなたの知らない「棚の奪い合い」と、新商品の宿命

もう一つの大きな理由は、お店の棚の限りです。
スーパーやドラッグストアに並んでいる商品の数を、一度想像してみてください。

あの限られたスペースに商品を置くために、メーカーは常に熾烈な競争をしています。

わたし
わたし

それはもうバチバチですよ

新しい商品を一つ棚に置くためには、今ある商品を一つ棚から外さなければならない、という厳しい現実があります。

私が担当していた業務の一つに、販売店さま向けの「商品案内」の作成がありました。

華々しい新商品の案内の裏では、必ずと言っていいほど終売リストというものが存在します。
これは、「これらの商品は、もうすぐ生産を終了します」というお知らせです。

商品データを見てきた観点から言うと、たとえあなたにとっては「お気に入りNo.1」だったとしても、売上データがほんの少しでも下がり始めると、それは新商品に棚を譲るための「終売候補」になってしまう可能性があるのです。

決して、その商品の価値がなくなったわけではありません。

ただ、新しい商品を生み出し続けるためには、古い商品に卒業してもらわなければならない。
それが、市場の仕組みなのです。

さよならの理由を知れば、モノとの出会いがもっと大切になる

今回は、お気に入りの商品がお店から消えてしまう裏側の理由についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • どんな人気商品にも「寿命(ライフサイクル)」があること
  • お店の棚は有限で、常に新商品との入れ替えが起きていること

ということになります。

この仕組みを知ると、「ずっと使い続けられる」という前提でモノを選ぶことが、実はとても難しいことだと気づかされます。

だからこそ、大切にしたいのは「今、これを選ぶ」という、一つひとつの選択なのかもしれません。

いつかなくなってしまうかもしれないと思えば、お気に入りの商品を使える毎日が、少しだけ特別なものになるのではないでしょうか。

この記事が、あなたがこれから何かを選ぶときに、そのモノとの出会いを大切にするための、小さなきっかけになれば嬉しいです。

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